岡山地方裁判所 平成4年(ワ)491号 判決 1993年9月30日
原告
難波恒正
被告
矢田信子
主文
一 被告は、原告に対し、金四一七九万一三九七円及びこれに対する平成二年一二月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを四分し、その一を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。
四 この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、金五五〇〇万円及びこれに対する平成二年一二月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 本件交通事故(本件事故)の発生
(一) 日時 平成二年一二月一九日 午前九時五分ころ
(二) 場所 岡山市庭瀬八三番地先道路上
(三) 加害者 被告
(四) 加害車両 普通貨物自動車(被告車)
(五) 被害者 原告
(六) 被害車両 自動二輪車(原告車)
(七) 事故態様 原告車と被告車とが出合頭に衝突したものである。
2 責任原因
被告は、前記加害車たる普通貨物自動車の保有者であるから、人的損害につき自賠法三条に基づき損害賠償の責任がある。
また、被告には安全不確認等の過失があるので、物的損害につき民法七〇九条に基づく損害賠償の責任がある。
3 損害
(一) 入通院中の慰謝料 三五〇万円
原告は、本件事故によつて右上腕神経叢麻痺等の傷害を被り、事故日の平成二年一二月一九日から症状固定日とされる平成四年四月一三日まで、入院一八九日以上、実通院一〇九日以上、総治療日数四七一日の加療を受けた。従つて、入通院慰謝料は三五〇万円が相当である。
(二) 後遺障害に基づく慰謝料 一一五〇万円
原告の後遺障害は、一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したものとして、自賠法施行令二条による後遺障害別等級表の六級六号に該当する。従つて、後遺障害に基づく慰謝料は一一五〇万円が相当である。
(三) 後遺障害に基づく逸失利益 五五七三万七〇〇〇円
原告は、本件事故当時健康な三四歳の男子であり、原告の現実収入は、年間四三三万六七〇〇円であつた。そこで、後遺障害等級六級の労働能力喪失率は六七パーセント、逸失期間は就労可能年数とされる六七歳までの三三年間(原告の従前の業務は酒店の店員兼運転手であつて、全く従前の業務に就くことができず、右上肢の用を廃しているため、就職しようにも就職先がない状況にある。)で、これに対応する新ホフマン係数は一九・一八三であるから、逸失利益は五五七三万七〇〇〇円(端数切捨て)となる。
(4,336,700円×0.67×19.183=55,737,913円)
(四) 車両損害 一四二万一〇〇〇円
(1) 修理代 九七万一九三〇円
(2) 代車料 一五万円(一日五〇〇〇円の三〇日分)
(3) 評価損 三〇万円(修理代の約三〇パーセント)
(五) 損害合計と損益相殺等
前記(一)ないし(四)の損害の合計は七二一五万八〇〇〇円であるが、原告は自賠責保険から七五〇万円の支払いを受けているから、差し引き六四六五万八〇〇〇円となるところ、本件訴訟では、内金五〇〇〇万円を請求する。
(六) 弁護士費用 五〇〇万円
4 よつて、原告は、被告に対し、自賠法三条及び民法七〇九条に基づく損害賠償請求として五五〇〇万円及びこれに対する不法行為の日である平成二年一二月一九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
二 請求原因に対する認否及び反論
1(一) 請求原因1(一)ないし(六)の各事実は認める。
(二) 同1(七)の事実は否認する。
2 同2の前段は認め、後段は争う。
3(一) 同3(一)の治療経過は不知。慰謝料額は争う。
(二) 同3(二)は争う。原告の後遺障害等級は八級六号が相当であり、慰謝料額は、これを前提に算定されるべきである。
(三) 同3(三)は争う。後遺障害等級八級六号を前提に算定されるべきである。また、原告は、後遺障害にも拘わらず、就労が不能というわけではないから、労働能力逸失期間を六七歳までの三三年間とみることは相当でない。
(四)(1) 同3(四)(1)の事実は不知。
(2) 同3(四)(2)の事実は否認する。
(3) 同3(四)(3)は争う。
(五) 同3(五)、(六)の各事実は不知。
三 抗弁(過失相殺)
1 本件事故の態様
(一) 被告は、狭い市道(東西市道)を本件事故現場にある南北市道と交差する交差点(本件交差点)に向けて東進していたが、交差点手前で一旦停止し、カーブミラーで右(南)方向からの進行車両のないことを確認した上、右折ウインカーを出し、徐行して、右方向を注視することにより同方向の安全を十分確認しながら右折を始めた。
(二) ところが、被告は、右折を始めた途端、急速度で進行してくる原告車を認めたため、右折を止め、本件交差点中央付近に停止した。原告車は、急ブレーキをかけ、転倒した形ですべり、被告車に接触、衝突した。なお、被告は、原告の警笛は聞いていない。
2 原告の過失
本件事故は、原告が、南北道路が二〇キロメートルに制限されているにも拘わらず、著しく制限速度を超えた時速約六〇キロメートルで進行したこと(なお、原告は、中国短大の正門を過ぎて急加速している。)、または原告の前方不注視が原因である。従つて、原告の過失は著しく大きく、少なくとも八割とするのが相当である。
四 抗弁に対する認否及び反論
1 抗弁1、2は否認ないし争う。
2 本件事故の態様
(一) 本件事故は、信号機により交通整理が行われていない本件交差点において、幅員三・七メートルの南北市道(優先道路)を直進進行中の原告車(自動二輪車)と、幅員二・七メートルの狭路かつ左右の見通しの悪い道路から右折しようとした被告車(四輪車)の出合頭衝突形態である。
(二) 被告が、本件交差点の手前で一時停止したか否か、被告が右折の点滅をしていたか否かについて疑問がある。そして、被告が仮にこれらを実行していたとしても、本件交差点は左右の見通しが悪いにも拘わらず、被告は、カーブミラーのみで南北道路の安全を確認しただけで、十分な安全確認をしないまま、漫然と本件交差点に進入して、本件事故を惹起させた。
(三) 原告車の速度は、スリツプ痕の長さからしても約三〇キロメートルである。また、原告は、被告車を発見して警笛を鳴らしたところ、被告車が停止したので、原告は安全と考えて、本件交差点へ直進したにも拘わらず、被告は無理に交差点に進出したものである。
3 被告の過失
本件事故の原因は、狭路から左右の見通しの悪い本件交差点に漫然と敢えて進出した被告の一方的過失に基づくものである。従つて、原告の過失割合減額は、一〇ないし二〇パーセントが相当である。
第三証拠
証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 請求原因1(一)ないし(六)及び2の前段各事実は、当事者間に争いがない。右事実によると、被告は、自己のために被告車を運行の用に供しており、その運行によつて、原告の身体を害したものであるから、自賠法三条に基づき、これにより生じた人的損害を賠償する義務を負う。
二 過失割合について
被告は、過失相殺の抗弁を主張しているので、以下検討する。
1 本件事故の具体的態様
前記一の争いのない事実と、証拠(甲一、一〇、三一、乙一、乙二の一ないし六、原告・被告各本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故の具体的態様は、以下のとおりであつて、証拠(甲三一、原告・被告各本人)中、右認定に反する部分は採用することができない。
(一) 本件事故現場は、撫川方面から庭瀬に向け、東西に入つて来る幅員約二・七メートルの道路(東西道路)が、平野方面より川入方面に南北に走る車道幅約三・七メートル(更に東側に約〇・八メートル、西側に約一メートルの路側帯が存在する。)の市道(アスフアルトの舗装道路、南北道路)と交差する。信号機により交通整理の行われていない、いわゆるT字型交差点(本件交差点)である。
(二) 本件交差点付近は、非市街地で、南方には、南北道路沿いに中国短期大学を始め、吉備小学校、吉備中学校があつて、本件交差点周辺には、右短大の寮、下宿もあり、南北道路は、時速二〇キロメートルの速度制限がなされている。東西道路から本件交差点に入るについては、右方向は建物及びその敷地となつているため、見通しは非常に悪く、また、南北道路を南側から本件交差点に向かつて進行する者にとつても、左方向(東西道路)の見通しも悪く、本件交差点の北方で、南北道路の東側路側帯の位置には、カーブミラーが設置されている。なお、本件交差点入口には、いずれの道路とも一時停止の規制はなされていない。
(三) 本件事故当事は、午前九時過ぎて、通学中の短大生の通行が多く、また、教師の車両等も通行する時刻であり、天候はくもり、路面は乾燥していた。原告にとつて南北道路、被告にとつて東西道路は、通勤のため毎日利用する道であり、双方とも前記のような本件交差点付近の状況は認識していた(但し、原告は、南北道路の制限速度を毎時三〇キロメートルと認識)。
(四) 被告は、本件事故当日、被害車を運転し、撫川方面から時速三〇ないし四〇キロメートルの速度で東西道路を本件交差点に向けて東進し、本件交差点に入る以前から減速し、右ウインカーを点滅させ、徐行しながら進んだ。そして、被告は、本件交差点手前で、一旦停止し、左前方にある前記カーブミラーで右方向(南北道路の南方向)からの進行車両の有無を確認したところ、カーブミラー中には、接近中の車両を発見しなかつた。
(五) 他方、原告は、南北道路を本件交差点に向けて進行していたが、中国短大南門前を通過してからは、少なくとも時速約四〇キロメートル程度の速度を出して、本件交差点に向けて走行した。
(六) 被告は、徐行し、右方向を見ながら、本件交差点に向け右折し始め、被告車前部を少し本件交差点に進入させたころ、約二三メートル右前方(南方向)付近を本件交差点に向け進行中の原告車を発見したため、危険を感じて、即座に右折を止め、ブレーキをかけて、約二・五五メートル進行した地点で、本件交差点中央付近に停止した。
(七) 他方、原告も、被告車前部が少し既に本件交差点に向け出て来てから、被告車を発見した。原告は、危険を感じて、急ブレーキを踏んだところ、前輪が先に固着するような効き方でスリツプして(スリツプ痕の長さは、前輪が約一二・八メートル、後輪が約四・四メートル)、被告車と本件交差点中央付近で衝突し、その後横滑りの状態となつて転倒した。
2 前記1の認定事実につき、若干の補足説明を加える。
(一) 原告車の進行速度について
原告は、本件事故当事の原告車の進行速度につき約三〇キロメートルと主張するのに対し、被告は約六〇キロメートルと主張しているところ、証拠(甲一〇)によつて認められる前記1(七)の原告車の前輪・後輪のスリツプ痕の長さに徴すると、原告車の速度は、少なくとも時速約四〇キロメートル程度であつたものと認めるのが相当である。
(参考計算式)
v=制動初速度(km/h)、μ=タイヤと路面間の摩擦係数(乾燥アスフアルト道路の摩擦係数を〇・七とする。)、l=制動距離(m)、l’=一輪のスリツプ痕の長さ(m)とすると、l=1/2・l’と補正できるから、
<1> スリツプ痕一本の場合(一輪のみスリツプした場合)
の公式で求められるところ、μ=〇・七、l’=一二・八を代入すると、v=三三・六五km/hとなる。
<2> スリツプ痕二本、或は重なつて一本の場合(二輪がスリツプした場合)
の公式で求められるところ、μ=〇・七、l=一二・八を代入すると、v=四七・五九km/hとなる。
ところで、本件において、原告車は、前記スリツプ痕の状態によれば、前輪を先に制動してから、補助的に後輪を制動させたように推認されるから、制動初速度は、<1>と<2>の中間にあると推認することができる。(以上、基本数値、公式等の出典は、判例タイムズ二一二号二三六頁掲載の鈴木勇「自動二輪車の制動距離に関する鑑定書」である。)
(二) 原告の警笛吹鳴と被告車の一旦停止・再発進の有無について
原告は、被告車を発見して、警笛を鳴らしたところ、被告車が停止したので、原告車を進行させた旨主張し、証拠(甲三一)中には、これに沿う供述記載も存するが、これを否定する被告の供述(乙一、被告本人)及び原告本人の供述内容自体に照らし、採用することができない。また、本件全証拠によつても、被告車が本件交差点に進入した後、原告車を発見し、一旦停止したにも拘わらず、再び発進した事実はこれを認めることはできない。
3 そこで、前記1、2の事実関係を前提に、被告と原告の過失につき検討する。
(一) 被告の過失
被告は、交通整理の行われていない本件交差点に進入するに当たつては、原告車側の南北道路の方が優先道路であるから、徐行し、また、本件交差点内に進入し、かつ右折するに当たつては、南北道路の通行車両に特に注意し、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならず、南北道路を直進する車両の進行妨害をしてはならない義務を負つており(道路交通法三六条参照)、殊に、本件交差点では、原告・被告進行方向では、互いに相手方交差道路の見通しが悪いことに鑑みると、被告には、カーブミラーでのみならず、右方向の安全を十分に確認し、南北道路を進行する車両がないことを確かめた後初めて、最徐行し、安全確認を継続しながら、本件交差点に進入・右折する義務があつたというべきである。
ところで、被告は、本件交差点に入る以前の徐行、右ウインカー点滅、交差点手前での一旦停止、カーブミラーによる右(南)方向の安全確認を履行した後、更に、徐行し、右方向を見ながら右折したことは、前記1(四)、(六)で確認したとおりであるが、本件事故の発生、被告車が原告車を発見してから停止するまで進行した距離等に徴すると、被告にとつて、右方向の見通しが非常に悪いことを考慮に入れても、被告には、自己の目による右方向の安全確認が万全というには不足し、そのような状態で、普通に徐行しながら、本件交差点に進入し右折を開始し始めた点に過失があるといわざるを得ない。
従つて、被告は、原告に生じた物的損害につき民法七〇九条に基づく賠償義務を負うことになる。
(二) 原告の過失
原告には、南北道路が優先道路になるとはいえ、通勤・通学路に当たり、しかも見通しの悪い東西道路も交差道路として存在するのであるから、制限速度を順守し、かつ、前方を注視して南北道路を進行すべき義務があつたといえる。ところが、原告は、制限速度を約二〇キロメートル超えた時速約四〇キロメートルで南北道路を進行した点に過失があることは明らかである。
(三) 過失割合
以上検討した、本件事故の現場の状況に徴すると、本件交差点に進入するに際しては、基本的に被告の方に、より高度の安全確保の注意義務が課されているといえる一方で、原告が制限速度を遵守しておれば、原告車を発見してからでも、急制動により衝突を回避することは可能であつたという意味において、原告の落ち度も決して小さくないといわざるを得ない。そして、右事実に、被告と原告の前記各過失の態様や本件事故の態様、本件現場の状況(T字型交差点)、車種の相違等、本件に現れた一切の事情を併せ考慮すると、本件事故発生についての過失割合は、原告が三割五分、被告が六割五分と認めるのが相当である。
三 損害
1 傷害(入通院)慰謝料
証拠(甲二ないし七、一一ないし二二、三二、原告本人)によれば、原告は、本件事故により、右腕神経叢麻痺等の傷害を負い、本件事故日の平成二年一二月一九日から症状固定日とされる平成四年四月一三日まで、約一年四か月の間に、入院期間約一八六日(実日数は約一六六日)、通院実日数約一〇八日の入通院治療を受けたことが認められ、右傷害の内容・程度、入通院期間のほか、前掲証拠によつて認められる、診療内容、その間原告が被つた苦痛等を考慮すると、傷害(入通院)に対する慰謝料は三〇〇万円と認めるのが相当である。
2 後遺障害に基づく慰謝料
(一) 証拠(甲八、調査嘱託の結果)によれば、原告は、本件事故により、右腕神経叢麻痺の後遺障害を残しているところ、右傷病の具体的症状は、肩関節の主動作筋である三角筋の完全麻痺、肘関節の屈曲の主動作筋である上腕二頭筋の完全麻痺、肘関節の伸展の主動作筋である上腕三頭筋の強度の麻痺があつて、右症状の改善の見込みはなくなつていることが認められる。右事実と川崎医科大学附属病院における原告の主治医明石謙医師の医学的見解に鑑みると、原告の後遺障害は、一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したものとして、自賠法施行令二条の後遺障害別等級の六級六号程度のものであると認めるのが相当である。
(二) 前記(一)の後遺障害の内容・程度と、証拠(甲四〇、原告本人)によつて認められる右後遺障害による原告の精神的苦痛を考慮すると、後遺障害に基づく慰謝料は、一一〇〇万円と認めるのが相当である。
3 後遺障害に基づく逸失利益
証拠(甲二三ないし二七、原告本人)によれば、原告は、本件事故当時、健康な三四歳の男性であり、酒類販売店で、店員兼運転手として稼働し、年間四三三万六七〇〇円の収入を得ていたところ、前記後遺障害のため、従前と同じ業務には就くことはできない状態にあることが認められる。右事実に、前記2(一)で認定した本件後遺障害の内容・程度(重度の機能障害であり、改善の見込みはないこと)とを併せ考えると、労働能力喪失率は六七パーセント、労働能力低下期間は就労可能年限(六七歳)までの三三年間と認めるのが相当である。そして、中間利息の控除につき新ホフマン係数(一九・一八三)を用いて、本件事故当時における原告の逸失利益の現価額を算定すると、五五七三万七九一三円(円未満切り捨て)となる。
4,336,700円×0.67×19.183=55,737,913円
4 車両損害
(一) 修理代
証拠(甲二八、二九、原告本人)によれば、原告車は、本件事故により大破したところ、その修理費用の見積金額は九七万一九三〇円であることが認められる。従つて、原告が被つた修理代相当額の損害は九七万一九三〇円と認める。
(二) 代車料
本件全証拠によつても、原告が現実に代車を使用した事実は認めることはできない。従つて、代車料の請求は失当である。
(三) 評価損
証拠(甲二八ないし三〇、原告本人)によれば、原告車は、原告が平成二年五月六日ころ、一三四万九六五〇円で購入した新車(自動二輪車)であつたところ、本件事故により大破したものであることが認められ、右事実によると、原告車の評価損(いわゆる格落ち損)は、前記(一)の修理代の約二〇パーセントに相当する二〇万円と認めるのが相当である。
5 過失相殺による減額と損害の填補
前記1ないし4の損害額の合計額は、七〇九〇万九八四三円となるところ、前記二3(三)の過失割合により三割五分の減額を行うと、原告が被告に対して請求し得る金額は四六〇九万一三九七円(円未満切り捨て)となる。そして、証拠(甲九)及び弁論の全趣旨によれば、原告が自賠責保険から七五〇万円の填補を受けたことが認められるから、右金額を差し引くと、被告が原告に賠償すべき損害額は三八五九万一三九七円となる。
6 弁護士費用
本件事案の内容、審理経過、認容額等を考慮すると、本件事故と相当因果関係にある弁護士費用相当の損害額は、三二〇万円と認めるのが相当である。従つて、賠償額の合計金額は、前記5の金額に右三二〇万円を加えた四一七九万一三九七円となる。
四 結論
以上の次第で、原告の請求は、四一七九万一三九七円とこれに対する本件事故の日である平成二年一二月一九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条一項本文を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 徳岡由美子)